『髑髏城の七人season花』感想その1

4/14に1回目を見るまでは、「髑髏城、嫌いじゃないけど…」だったのに、気づけばそこから3週連続で観に行って、ライビュも行って、5月末に観て、あと1回は確保済み、ってくらいにはハマってる「髑髏城の七人season花」

「こういうのが観たい」を裏切って、かつ「私が観たいのはこれだった!!」となる快楽。
山本耕史蘭兵衛への違和感も気づけば「美しい」になっているし、成河天魔王はずっと眺めていたい。
勿論それなりに不満もあるけど、それ以上にあの劇場でしか見られない演出がカッコよくて、面白かった。
新感線最高だな!!


左から捨之介(小栗旬)、天魔王(成河)、蘭兵衛(山本耕史)
古田新太、りょう、青木崇高、清野菜名ほか

新感線は2011年のワカドクロ以降(と2006年メタルマクベス)を生で見ているものの、阿弖流為以外はそこまでピンと来なくて、今回の髑髏城も、パンフで古田さんが「髑髏城の七人は若書き」と指摘しているように(ワカドクロのパンフで粟根さんも同じことを言っている)「朧や蛮幽鬼の後だとさあ…」と思ってたんだけど、ちょっとした脚本の変更や、アレンジ、配役でこんなに変わるのね『髑髏城の七人』は。
こういう舞台機構でああいう見せ方になる面白さ。
今回も80分+110分という長さだけど、バランスがいいのかライビュ含めて4回観たけど全然ダレなくて、ほんと楽しかった。

【以下ネタバレあり】

…何から書いたらいいかまとまらない。

『髑髏城の七人』あっちを合わせるとこっちの辻褄が合わないかなあ…と思ってて。
例えばワカドクロ蘭兵衛(早乙女太一)がいちばん一般的なお小姓・森蘭丸イメージに近くて「正解!!」感がある(19歳の破壊力…!!)。
そのぶん色里を差配してたり、極楽太夫と関係を築いているようにはまったく見えず、天魔王に付いてからも「指揮権は蘭丸が取る」って無理じゃね?と思わずにはいられない。
アオ蘭兵衛もこの系譜(歴代蘭兵衛で最も儚いのはアオドクロ蘭兵衛だと思う)。

逆に花髑髏蘭兵衛は、前軍を率いることは出来そうだけど、「森蘭丸??山本耕史が?」感がものすごくて。
でも、それって(蘭丸あにじゃ、に別途萌えつつも)ワカドクロ蘭兵衛を引きずっていたからなんだなーと、3回観て気付いた(鈍い)。

今回のこの
 ワカ:捨之介>天魔王>蘭兵衛、の三兄弟
 ハナ:蘭兵衛>捨之介>天魔王、の三兄弟
って変更は、かなり重要なんだなーと。

一旦は過去を捨てて無界屋蘭兵衛として生きることにしたのに、結局は昔の縁に絡めとられての「しょせん外道だ」
蘭兵衛の台詞といえば、これと「安くはないぞ、天魔王」が双璧。

ワカ蘭兵衛はきっと他の生き方なんて知らなかったろうという、青さゆえの苦しさ。
すごく主観的に苦しくて、夢見酒は救済だったろう。
あの飲まされ方に、天魔王の中に殿を見た…見たかったのかもしれない。
ワカは蘭兵衛自信が「これが俺の本性だ」
花髑髏は、天魔王が「これが俺とお前の本性だ」

ハナ蘭兵衛は、その後、極楽との関係を築ける程度には大人。
 #兵庫のことどう思ってたんだろうw
基本的には笑わず、人を切り殺しているときにちょっと微笑んでるかな?くらいで、喪ったのは殿だけではなく、殿の難しい仕事を差配する自分自身もかもしれない。
名を呼ばれて虚を突かれたように呆然としていたけど、自分が苦しいことを客観視している蘭兵衛にも見える。
「自分のほうが上手くやれる」のガチ度も高そう。
だから天魔王に言葉で口説かれただけで説得される。
たぶん無理やり飲まされても酔ってなんかくれなくて、口づけされる前にもう心は決まってる。
(…あれ?夢見酒っていらなくね?少なくともあんなにフラフラじゃなくてもよくね?)

 #ある方のTwitterでの
 #「ワカのキスはかつての蘭丸を生き返らせる儀式、
 #花のキスは拒まないことを確認する契約のキス」との表現に納得

 #そういうのすっ飛ばしても、あの年下攻め・下剋上感のある夢見酒シーンは
 #大変良いものですけどね!!
 #天魔王小っちゃいから階段1段上にいるんだよ!
 #そっと頭を引き寄せるんだよかわいい!!最高か!!!!!!

とにかく今回の蘭兵衛は、お兄さんで大人な男の蘭兵衛だった。
自分が何に堕ちていくのか分かってる「しょせん外道だ」だったように思う。
今回は捨之介に向けて言うんだよ。
お前は知っているだろう、とでもいうかのように。
そりゃ、捨之介は俯いて、そして背を向けるしかないよね(5/26)。

その蘭兵衛が髑髏城に赴く前に、自分の作った街を眺めるシーン。
ああ、これはこの劇場じゃないとできないシーンだなあ…とつくづく思わされた。
無界屋の裏側から客と遊ぶ女たちに働く男たち…通常の舞台3セット分くらいが流れていく前に佇み、意を決したように走り去る蘭兵衛。
新感線はとにかく客席に向けた背中がカッコいいのだけど、この蘭兵衛の背中がたまらない。
このときは、まだ守ることを考えていた…んだよね…?

山本耕史さんが出ている作品は見たことがなくて、先日までサバンナの人とごっちゃになってたくらいなのに(ごめんなさい)、1回目の違和感が、2回目を観終わるころには「蘭兵衛あにじゃ…儚い…美しい…」になってたのは、我ながら魔法にかかったようだった。

—-
天魔王は、やっぱりよく分かんない。
宣伝ビジュアルがどっしりしたラスボス感のある髭天魔王だったので、そういう路線かと思ってたら、ワカ天魔王以上にトリッキーでビジュアル詐欺(いつもの)な天魔王だった。
結局は「兄者」と呼ぶのも、足の怪我すらも偽りで、でも蘭兵衛をスカウトしに来るわけだし…と全く本心を見せない天魔王。
その時々で蘭兵衛の呼び方も違っていて、ともかく策士。

で。
それに加えての爛れた左目と、自由の利かない左足、無界屋襲撃での、血の付いた手首~肘にかけてをぺろぺろ、さらにおにぎりを口にして(まっず)とうべーっとしてる猫っぽさに、悶え死にそうになってるのは事実なんですけど。
その点と点を繋いだ時に、じゃあ天魔王はどんな奴なの?というのが全く分からない。
「あにじゃ」と慕うキャラを引きずって観てしまうけど、それは私が好きなタイプのラインであって、そう描かれているわけではないような…つまりはやっぱり「お前はただの駒なんだよ」な性格にも思える。
最近?は、蘭丸に庇われたところで、切なそうな/泣きそうな顔をしているらしいけど、LV(5/15)では私はそうは見えなかったし、5/26はそのシーンの天魔王は見えない位置だったから、分からない。
LVだと、ただ戸惑った、ひるんだ、せいぜい「ショックを受けてる自分にびっくり」くらいのラインかなあと。

ま、なんかそのへんよく分かんなくてもシーン、シーンでカッコいのが新感線の最大の魅力だよね!!
→つづく

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